石川県議会議員 盛本芳久

携帯所持規制/可決するも,条例による規制には疑問 6月定例会閉会

 6月29日,県議会6月定例会最終日,採決が行われました。

 今議会では,次期県議選('11.4)での定数削減,議員提案の小中学生の携帯電話所持規制条例が話題となりました。

 定数削減問題に,私たち清風連帯会派は当初より2から3の減員を主張してきました。行政改革の視点での総数削減と県民の意見の議会への反映という点からの数です。また,1人区を解消し,複数によって県民の意見反映をする方向での選挙区の合区を進めることも主張してきました。
 当初4人減でまとまった自民党も,条例本文通りの能登3減,金沢1減には反対で,金沢2減にこだわりました。金沢2減には,自民以外のすべての会派が反対し,最終的に折衷案的な3減(能登2,金沢1減)にまとまり,議案提案・可決となりました。

 議員の数は少ないほどいいというような意見も聞かれますが,問題は議会が活性化され県民のための議論を真剣にやっているのかどうかと言うことです。さらに議会を開かれたものにし,選挙も政策をたたかわせ,その内容について市民の意志を問うという当たり前の姿にしていくことが重要です。投票率も下がり続けていますが,市民の政治参加こそ議員に刺激を与え,議会の機能が増すことになると思います。
 ともかく,次期選挙では金沢の定数は1人減って,定数は16人になります。厳しい選挙になりますが,選んでもらえる議員となり続けるよう,しっかり働いていきます。

 子どもの携帯電話所持規制については,知事提案と議員提案の2つの条例案が提出されました。我々はフィルタリング強化を行う知事提出議案には賛成しましたが,所持そのものを規制する議員提案の条例については反対をしました。
 持たさないと条例で圧力をかけることで,今の携帯を巡る問題は解決に向かうとは考えられません。保護者にも子どもにも,正しく情報選択判断ができる規制や施策を丁寧にやっていくことこそ行政の責任であると思います。

 反対討論にたち,この点について訴えましたが,いずれの議案も可決となりました。携帯にからむ問題については追い続けていきたいと思います。「持たせるなー」と言い続けていても何も進まないのですから。

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                           6月30日(火)北陸中日新聞

 

反対討論の全文は以下の通り

     議会中継 http://www.pref.ishikawa.jp/gikai/index-tv.html
                       (6月29日午後 質疑討論)
     北陸中日新聞社説「強制がなじむか疑問だ」
           http://www.molimoto.com/blog/2009/06/post-47.html

 清風連帯は議会議案第1号および,請願第71号に反対し,他の請願および,知事提出議案のすべてに賛成いたします。
 以下,議会議案第1号「いしかわ子ども総合条例の一部を改正する条例」に対する反対理由を述べます。 第1に,議会においても,県民の間にも議論が不足していることです。
 石川県議会初めての議員による政策提案条例でもあり,議会の全会一致の内容となるまで議論を尽くせなかったことは,まことに残念です。そして,この条例案に対する県民の疑問も残っております。「そこまで行政は踏み込む権限や必要性があるのか」という意見や,今,問題なく所持・使用している子どもや保護者の戸惑いの声も聞きます。「大きなお世話だ」という人もいます。
 条例による所持規制にはこのように,否定的な意見が多く聞かれます。法律で決めて,持たせなければいい,禁止してほしいという声もあるのではと私も予想もしましたが,このような意見は直接届いてはいません。県民の多くは冷静に,慎重に考えています。条例による所持規制という方法は,県民の胸にすとんと落ちてはいないのです。議論は足りないといわねばなりません。

  2つめには,この条例の趣旨と携帯端末をめぐる現状には大きな乖離があるのではないかという点です。様々の報道や教育,啓発活動によって,有害サイトへのアクセスの危険性や,問題サイトやメールによるいじめ等のトラブルがあることも社会的に認識され,定着しつつあります。このような状況ですが,子どもの携帯端末使用の現状を見ますと,昨年の4月段階で,中学3年生の保有率が全国で約6割,石川県内でも約4割という数字が全国学力テストの調査から出ております,そして保有率はさらに上昇していると思われます。
 一方では,対策も進みつつあります。本年4月からの青少年インターネット環境整備法によるフィルタリングの法的規制が開始されました。そして,フィルタリング解除の条件の厳格化をめざす条例改正案も今議会に知事提案されています。また,遮断したい内容に応じた多様な条件によるフィルタリングが選択可能となってきていると聞きます。さらには,警察によるサイバー犯罪対策,教育委員会・学校などによる問題サイトのパトロールや指導が進んでおりますし,100%に近い学校で,IT教育の内容として情報リテラシー教育も実施されています。また,県内すべての小中学校は学校への持ち込みを原則禁止する指導を行っています。
 これらの対策は,これまで保護者や学校が自主的に,あるいはまた行政や議会からの指摘には国や業界が対応してきたといえるわけで,ある意味では,我々のとりくみの成果ともいえます。どうして,今更,持つことそのものを規制するという対策を議会から発信することになるのかわからないのです。

 次に3つめ,この条例が子どもの安全にとって有効な方法とは考えられないと言うことです。
 多くの家庭では,皆様の家庭同様,子どもと保護者の話し合いによって,購入と使用方法を決めています。積極的に持たせる,またやむを得ず許可している,それぞれの家庭にはそれぞれの理由があり,約束事があります。ほとんどの例が,所持が認められる「特別な」場合に含まれることになると考えられます。とすれば,この条例化で提案者が最も行いたいのは,子どもと十分に関わることができない保護者に対するアピールでしょうか。しかし,この条例がそのような家庭に効果を発揮できるかは疑問です。当面,行政として,携帯端末を持たさないよう保護者に求めるとしても,購入時のチェックは不可能ですから,結局のところ保護者に任せるしかありません。状況は変わらず,条例に従わない親は,批判の対象となるだけで,その後の対策はストップしてしまうのではないでしょうか。このような家庭にこそ,一律な規制ではなく,丁寧に理解を求めるとりくみが必要ではないかと考えます。

 さて,条例化とその後の展望についてが,疑問の4点目です。
 高校生の保有率は全国同様95%を超えています,この条例による規制を高校生にまで広げるという展望をもってとりくむのか。今後,状況が変化し,小学生以下までに規制を緩めるということになればそれは後退を意味するのか。中学生以下にこだわり続けるのか。条例化の先が見えないのです。携帯端末は機能,利便性,安全対策,あらゆる面で進化し続けています。近い将来,我々の予想もつかない次世代携帯が登場することも十分予想されます。条例であれば,少なくとも5年10年先まで通用する内容であるか,または,様々な事態に対応した改正を受け入れる余地のある内容であるべきです。全国初の内容を持つ条例は,一時的な話題性によって,石川の小中学生と保護者に一定のインパクトを与え,所持率を下げるかもしれません。しかし,条例の効果すなわち所持率という数字を追いかけるということが目的化し,有効な対策の実施を遅らせるのではとの懸念もあります。 このように,どう考えても条例化には無理があるということが結論です。

 かつて,漫画もテレビも子どもには見せるべきではないという議論がありました。現在でもそのような基本的考えによって教育を行っている家庭もありますが,積極的に家庭教育に活用している保護者も多くいます。携帯端末はテレビや漫画と同様に進化し続けるメディアでありツールです。その使用は家庭が選択すべき問題であり,それは尊重されるべきです。行政がやるべきは,家庭教育への介入ではなく,情報格差をなくし,自由なアクセスと選択を保証すること,悪質な業者やサイト運営者の規制を強化し,各種メディアが子どもたちにとって有用で安全なものとなるよう,県民や業界と連携・協力して,具体的な対策ととりくみを行って行くことではないかと考えます。 以上のような理由により,持つことそのものを規制する本条例には問題が多く,廃案にすべきものと考えます。

  以上,議員各位の慎重な判断を期待いたしまして,清風連帯を代表しての討論を終わります。